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クリニックの損益分岐点はどう計算する?|「1日何人」は固定費と単価で変わる

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「クリニックの損益分岐点は1日何人ですか」——開業前によく出る質問ですが、これに全国共通の答えはありません。損益分岐点は、診療科・固定費・外来単価・人員・借入条件などによって変わる計算結果だからです。そして見落とされがちですが、損益分岐点は「これだけ来る」という患者数の予測ではありません。費用側から逆算した「収入と費用が釣り合う最低ライン」であり、地域の需要から推定した患者数とは、別々に求めて比べるものです。この記事では、その計算の考え方と、数字が動く要因を整理します。

損益分岐点は「費用側から逆算する最低ライン」

損益分岐点とは、利益がゼロ(収入と費用が釣り合う)になる規模のことです。一般に、損益分岐点売上高は「固定費 ÷ 限界利益率」で求められます。限界利益率は「1 − 変動費率」で、売上のうち固定費の回収に回せる割合を表します(中小機構 J-Net21)。

クリニックの場合、これを「1日あたりの外来患者数」に置き換えると、MEDLOTの収支シミュレーターは次の形で計算しています。

分岐点の1日患者数 =(月間の固定費 − 外来以外の貢献利益)÷(外来単価 × 限界利益率 × 月間診療日数)

  • 月間の固定費:人件費(賞与・法定福利を含む)・家賃・その他固定費・医療機器の保守修繕費・減価償却費・借入の支払利息(採用した借入額の初月ぶん)の合計
  • 限界利益率:1 − 変動費率(診療材料・検査試薬などの売上比例費用を引いた残り)
  • 外来以外の貢献利益:皮膚科の自費や消化器内科の内視鏡など、外来とは別の売上から出る利益

つまり損益分岐点は、患者数を予測して出すのではなく、費用の構造から逆算して出す数字です。ここで示す1日患者数は、会計上の損益分岐点売上高を、外来単価・限界利益率・診療日数を使って患者数へ換算したものです。一方、借入元金の返済や入金時差まで含めた資金繰り上の「現金が尽きない水準」とは別なので、混同しないよう注意します。

「1日何人」が変わる要因

同じ診療科でも、次のどれか一つが変わるだけで損益分岐点は動きます。

要因損益分岐点への効き方
家賃・人員構成と賃金・その他固定費固定費が増えるほど分岐点は上がる
設備投資と減価償却投資が大きいほど月々の償却が増え、分岐点が上がる
借入額・金利支払利息が固定費に乗る
外来単価1人あたりの利益が変わり、分岐点が上下する
変動費率限界利益率(1 − 変動費率)が変わる
月間診療日数1ヶ月に診られる延べ人数が変わる
自費・内視鏡などの外来以外の売上その貢献利益ぶん、外来で必要な人数が減る

これだけの変数があるため、「クリニックは1日◯人で黒字」といった固定値は、前提を固定しない限り意味を持ちません。

内科・外来中心モデルの前提例

数字が動く要因のうち、MEDLOTの収支シミュレーターが既定の目安として置いている前提を2つ挙げます。いずれも公的統計や業界標準ではなく、内科・外来中心モデルで使用している入力前提です。

  • 月間診療日数:20日(外来を行う暦日数の目安)
  • 外来変動費率:12.0%(内科・外来中心モデルの前提値。他科には当てはめません)

注意したいのは、この2つは計算結果ではなく入力前提だということです。そしてこの2値だけでは損益分岐点の患者数は出せません。家賃・人員構成・外来単価・借入条件などの入力がそろって初めて、費用側の逆算が成立します。

損益分岐点と患者需要は別々に求めて比べる

損益分岐点は「費用側から見た成立ライン」です。これに対し、その場所で実際に何人来そうかは「需要側」の話で、候補地の人口・競合・受療動向から別に推定します。判断は、この2つを並べて比べて行います。

シミュレーターでは、参考となる患者数レンジや、自分で入れた患者数と、費用側の損益分岐点を突き合わせて表示します。参考レンジが使えない地域でも、患者数を自分で入力すれば損益分岐点との比較は行えます。ただし、損益分岐点を上回る・下回るという一点だけで開業の成否を断定はできません。あくまで、費用条件と需要の見込みのどちらに無理があるかを点検するための道具です。

まとめ

損益分岐点に「1日◯人」という全国共通の答えを探すより、自分の家賃・人員・単価・借入条件を入れて計算するほうが実態に合います。損益分岐点は患者数の予測ではなく費用側の成立ラインであり、地域から推定した患者需要とは別々に求めて比べるもの——この二本立てで見ると、計画のどこに余裕がなく、どこを詰めるべきかが具体的に見えてきます。ご自身の前提での損益分岐点は、診療圏比較レポートとセットで提供するMEDLOTの収支シミュレーターで試算できます。

この記事で使用した数値と出典

本文中の数値は、承認済みの数値レジストリから表示しています。計算方法・出典の詳細は収支シミュレーションの計算方法・数値の出典をご覧ください。

  • 月間診療日数(外来診療を行う暦日数)の既定20日MEDLOT想定値

    出典: MEDLOT承認済み運用仮定(統計由来ではない・§7-B4)

    週5日相当20日の承認済み運用仮定。

  • 外来変動費率(科×診療スタイル・売上比)12.0%MEDLOT想定値

    出典: 業界通説(院外処方前提・2026-07)

    診療材料・検査試薬・処置材料・外注検査費・院内使用薬・自費診療材料を含む。

お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。

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本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:損益分岐点の一般式(損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=固定費÷(1−変動費率)): 中小機構 J-Net21(2026-07-18取得・HTTP200実測)「損益分岐点の計算方法」 https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/accounting/Q0240.html ・「損益分岐点を使った目標売上高」 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-2-9.html 。患者数ベースの分岐点式と入力前提はMEDLOT収支シミュレーターの確定ロジックによる。数値の種別・算定方法は記事内の「この記事で使用した数値と出典」パネルで確認できる。数値・制度は将来変更され得る。