開業コラム
クリニックに自由診療をどう組み込むか|『保険診療に足す』のではなく別の線として分ける
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開業後の収益を考えるとき、「自費メニューを足せば単価が上がる」と考えるのは自然です。しかし自由診療は、保険診療の上に積み増すようには設計できません。結論から言うと、自由診療は保険診療に「足す」ものではなく、「別の線」として分けて設計するものです。日本の制度では、同じ疾患の治療過程で保険と自費を混ぜること自体が原則として認められていないからです。この記事では、その原則・数少ない例外・そして分けて運用するために要るものを整理します。
原則:同じ治療過程で「混ぜられない」
まず土台の制度です。ひとつの疾病に対する一連の治療過程で、保険診療と保険外の診療(自由診療)を併せて行うことは、いわゆる混合診療として原則的に認められていません。健康保険法の規定の解釈や療養担当規則から導かれるものとされ、併用してしまうと本来なら保険が使えた部分まで含めて全額自己負担として扱われ得ます。
ここが誤解されやすい点です。「保険で診たうえで、自費のオプションを足す」という発想は、一般のサービス業なら自然でも、保険診療の枠組みでは原則として成立しません。自費を扱うかどうかは、料金メニューの問題である前に、診療の線をどこで分けるかという設計の問題になります。
例外は3類型——保険外併用療養費
とはいえ、併用が一切認められないわけではありません。制度上の例外が保険外併用療養費で、次の3類型に限って、保険部分は給付を受けつつ保険外部分を自費で徴収できるとされます。
| 類型 | 位置づけ | 例として挙げられるもの |
|---|---|---|
| 評価療養 | 将来の保険導入に向けて評価が必要な療養 | 先進医療、治験に係る診療など |
| 選定療養 | 保険導入を前提とせず、患者の選択に応じるもの | 特別の療養環境(差額ベッド)など |
| 患者申出療養 | 患者の申出を起点に、未承認の診療を迅速に使えるようにする枠組み | 国内未承認の医薬品を用いる診療など |
注意したいのは、これらが限定された例外だということです。自院で独自に「これは選定療養に当たる」と判断して運用できる性質のものではなく、対象や徴収の要件(料金の掲示など)は制度の側で定められています。
では実務で何ができるか——「別の疾患・別の線」
原則と例外を踏まえると、実際に取り得る形が見えてきます。同一の疾患について保険と自費を併せることはできませんが、別の疾患についてであれば、同じ日であってもそれぞれを行うことは可能とされています。
| ケース | 取り扱い |
|---|---|
| 同一疾患に、保険診療と自費診療を併せて行う | 原則不可(混合診療に当たる) |
| 同じ日でも、別の疾患について保険診療と自費診療をそれぞれ行う | 可能とされる |
| 保険外併用療養費の3類型に当たる | 併用可(保険部分は給付) |
実務では、患者が同日に保険と自費の両方を希望した場合、疾患の線が曖昧なら日を分けて受診してもらうよう案内する運用も紹介されています。つまり自由診療の設計とは、メニュー表を作る作業ではなく、「どの診療がどちらの線に属するか」を患者にも説明できる形で切り分ける作業なのです。
分けるコストは、会計・記録・掲示に出る
線を分けるという判断は、そのまま運用の負担として現れます。保険診療と自由診療は区分して管理する必要があり、会計・カルテ記載・請求の取り扱いが二本立てになります。料金についても、保険外の費用を徴収するなら院内掲示などで分かるようにしておくことが求められるとされます。
広告面も別扱いです。自由診療の内容をホームページ等に載せる場合、標準的な費用やリスク・副作用、治療期間などを併記することが求められる(いわゆる限定解除の要件)とされ、保険診療の告知とは書き方が変わります(医療広告のルール全体はクリニック開業の集患・広告で整理しています)。加えて、保険診療が消費税の非課税とされる一方、自由診療は課税取引として扱われるため、税務上の区分も増えます(税の全体像は個人開業医の税金の基本で扱っています)。自由診療は「単価の高いメニュー」である前に、二本立ての管理を背負う選択だということです。なお個別のケースがどちらに当たるかの判断は、所轄の厚生局や専門家に確認するのが安全です。
まとめ
自由診療は、保険診療に上乗せして単価を上げる手段ではありません。同一疾患の治療過程で混ぜることは原則できず、例外は保険外併用療養費の3類型(評価療養・選定療養・患者申出療養)に限られます。実務で取り得るのは「別の疾患・別の線として分ける」形であり、その分だけ会計・記録・掲示・広告・税の管理が二本立てになります。そのうえで自費の線がどれだけ成り立つかは、その地域にその需要がどれだけあるかに左右されます。地域の人口構成や競合の分布は公的データから無料で調べられ、自費を柱にできる立地かどうかを見極める材料になります。
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AI診療圏分析レポートを作成(無料)※ 本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:混合診療の原則と保険外併用療養費(評価療養・選定療養・患者申出療養): 厚生労働省「保険診療と保険外診療の併用について」 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/heiyou.html (2026-07-21取得)。制度の位置づけは健康保険法の規定の解釈・療養担当規則に基づく一般的整理であり、個別の診療がどちらに当たるかの判断は所轄の地方厚生局・専門家の確認を要する。医療広告の限定解除要件・消費税の課税区分は公開解説に基づく一般論で、特定の運用を保証するものではない。制度は将来変更され得る。