開業コラム
開業医の手取りはいくら残るか|『年収』の額面ではなく売上→手取りの目減りで考える
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「開業医の平均年収は2,600万円台、勤務医は1,400万円台」——こうした数字を見ると、開業すれば収入が大きく増えるように感じます。しかしこの比較は、そのまま受け取ると危険です。結論から言うと、世に出回る『開業医の年収』は売上や損益差額に近い数字であって、手元に残る手取りではありません。手取りは、そこから経費・税・返済を順に引いた後にようやく姿を現します。この記事では、その目減りの構造と、手取りを最終的に決めるものを整理します。
「年収」として語られる数字の正体
まず、よく引用される額を確認します。ある年度の開業医の平均年収は2,600万円台、勤務医は1,400万円台とされ、診療所院長の平均は有床で3,438万円、無床で2,578万円といった数字が挙げられます。
注意したいのは、これらの多くが個人の手取りではなく、事業としての売上規模や損益差額に近い概念だということです。勤務医の年収は給与=ほぼ手取りに近い一方、開業医の「年収」は事業の入口の数字。両者を額面で並べると、実態以上に差が大きく見えてしまいます。
売上から手取りまで、3段の目減り
開業医の場合、売上から手取りまでに大きく3段の控除があります。
| 段階 | 引かれるもの | 目安(出典により幅あり) |
|---|---|---|
| 経費 | 人件費(売上の20〜30%)、医療材料費(10〜20%)、家賃(6〜8%)ほか | 合計の経費率は40〜60%程度 |
| 税・社会保障 | 所得税・住民税・社会保険料など | 損益差額のおよそ35% |
| 借入返済 | 開業資金の元利返済 | 借入額次第(返済比率20%以内が原則とされる) |
売上の半分前後がまず経費で消え、残った損益差額の約3分の1が税・社会保障で引かれ、さらに借入返済が乗ります。額面の『年収』と手取りの間には、この3段ぶんの距離があるというのが実態です。
例で見ると、手残りはこう縮む
具体例で追ってみます。ある試算では、損益差額が3,100万円のケースで、税・社会保障の負担が約35%(約1,085万円)、借入返済や設備投資に600万円を充てると、手取りはおよそ1,400万円前後になるとされます。
つまり、事業としては3,000万円超を稼いでいても、個人が自由に使える手取りは半分以下まで縮むことがある、ということです。ここを取り違えて「平均年収2,600万円」を手取りだと思い込むと、生活設計も返済計画も狂います。だからこそ、黒字クリニックの原則として「借入総額を抑え、返済比率を20%以内に保つ」ことが挙げられます。
手取りを最終的に決めるのは、経費削減より売上
では手取りを厚くするには何が効くのか。経費率の圧縮にも取り組めますが、人件費も家賃も診療に必要な水準があり、削減には限界があります。結局、経費率がほぼ一定なら、手取りの絶対額は売上の大きさで決まります。そして売上は「1日の患者数 × 単価 × 診療日数」に分解され、単価と診療日数の幅が限られる以上、効くのは患者数です。手取りの話は、めぐりめぐって「どれだけ患者が来るか」に帰着します。
まとめ
開業医の手取りは、世間で語られる『年収』の額面とは別物です。売上から経費(40〜60%)、税・社会保障(約35%)、借入返済を順に引いた後に残るのが手取りで、額面の半分以下になることも珍しくありません。だから比べるべきは平均額ではなく、自分の売上見込みからの目減り構造です。そしてその出発点になる売上は患者数の関数であり、患者数の土台は診療圏の需要です。その売上を左右する需要・競合・将来人口は、公的データで無料で見通せ、額面の平均ではなく自分の手取りを見積もるための起点になります。
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