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開業コラム

「眼科は高齢化で伸びる」を政府データで検算する — 2035年に需要が増えるのは1,884自治体のうち356(18.9%)、その97.8%で65歳以上の実数が増えている

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「眼科は高齢化で伸びる科」と言われるが

開業の検討でよく聞く見立てに「白内障や緑内障など加齢で増える疾患が中心だから、眼科は高齢化が進む地域ほど患者が増える」というものがあります。実際、眼科の外来需要の6割以上は65歳以上が占めます。ではこの見立てのとおり、高齢化が進む地域では眼科の外来需要が増える方向に動くのか。増える地域には何か共通点があるのか。政府データだけで検算します。

使ったデータと「指数」の定義(意見ではなく計算)

  • 将来人口: 国立社会保障・人口問題研究所「令和5年推計」中位仮定(全国1,884自治体・政令指定都市20市は親市コードを除き行政区で計上・5歳階級)。
  • 年齢別の外来受療率: 厚生労働省「令和5年患者調査」の眼科・外来受療率(人口10万対、全国値・全年齢固定)。

各自治体の外来需要を 需要 = Σ_年齢層( 人口 × 受療率 ÷ 100,000 ) で求め、2025年を100として 指数 = 需要(2035) ÷ 需要(2025) × 100 を計算します。指数は患者数の絶対予測ではなく、その自治体で年齢構成の変化が外来需要を相対的に押し上げるか押し下げるかを見る相対値です。

結果:需要が増えるのは1,884自治体のうち356(18.9%)

眼科の外来需要指数は、全国計では2035年に 98.0、2040年に 96.4 と、総人口の指数(2035年 94.6)よりは緩やかに下がります。ただし全国計と自治体ごとの姿は一致しません。自治体単位の指数の中央値は 92.7、下位10%は82.4、上位10%は103.1、範囲は65.6〜117.6で、2035年に指数が100以上になる(=2025年より需要が増える)自治体は356、全体の18.9% でした。同じ計算で内科は29.2%、整形外科は22.6%、小児科は1.5%です(科ごとの比較は10年後も需要が残る科・縮む科の検算で扱っています)。

増えるか減るかは、人口規模で大きく割れます。

眼科の外来需要が2035年に増える自治体の割合・人口規模別%
59.520万人以上32.75〜20万人14.22〜5万人5.12万人未満
人口規模(2025年)自治体数需要が増える自治体の割合需要指数の中央値
20万人以上15859.5%101.0
5〜20万人49832.7%97.4
2〜5万人40114.2%92.4
2万人未満8275.1%87.2

需要が増える356自治体に共通していること

増える側の356自治体を、他の条件と突き合わせると次のようになります。

条件356自治体のうち該当割合(参考)1,884自治体全体での割合
65歳以上の実数が2035年に増える34897.8%36.6%
人口5万人以上25772.2%34.8%
総人口が2035年に増える13738.5%7.3%

読み取れるのは3点です。

  1. 65歳以上の「実数」が増えていることは、ほぼ共通している(97.8%)。高齢化率ではなく実数です。高齢化率が上がっても高齢者の実数は減る自治体が多いことは高齢化率と実数の乖離の検算で扱いました。
  2. ただし実数が増えれば足りる、ということではない。65歳以上の実数が増える自治体は全国に689ありますが、そのうち 341(49.5%)では眼科の需要指数は100を下回ります。高齢者の増加が、他の年齢層の減少を相殺しきれないためです。
  3. 総人口が増えている必要はない。増える356自治体のうち総人口も増えるのは137(38.5%)にとどまり、残る6割は総人口が減りながら需要指数が100以上になっています。

都道府県計で見ると、2035年の眼科需要指数が100以上になるのは47都道府県のうち5県で、最も高いのは沖縄県の107.0でした。県単位で100以上になるのは少数で、上の分布は県ではなく自治体単位で見たときの姿です。

なぜこの形になるのか(受療率の年齢プロファイル)

眼科の外来受療率(人口10万対)を年齢層別に見ると、加齢とともに上がった後、75〜79歳の681でピークを打ち、80〜84歳678、85〜89歳588、90歳以上では363まで下がります。ピーク時の約53%です。内科は90歳以上でも3,358と上がり続けるのと対照的です。

年齢層眼科の受療率(10万対)内科の受療率(10万対)
65〜69歳4241,993
70〜74歳5302,452
75〜79歳6812,938
80〜84歳6783,261
85〜89歳5883,273
90歳以上3633,358

一方、2035年までの人口の動きは年齢層で分かれます。全国の65歳以上人口の指数は103.3、0〜14歳は85.8、総人口は94.6です。つまり増えるのは高齢層だけで、その高齢層の内訳も、これから増える中心は最高齢層に寄っていきます。眼科の需要は65歳以上が61.2%(15歳未満は6.8%)を占めるため高齢層の動きに大きく左右されますが、受療率が75〜79歳でピークを打つため、最高齢層の増加は需要の押し上げに直結しません

この2つが重なった結果として、眼科の需要が増える自治体は「65歳以上の実数が増え、かつ65〜80代前半の層がある程度の規模で残る地域」に寄り、それが人口規模の勾配(20万人以上で59.5%、2万人未満で5.1%)として表れます。データ上は、高齢化の進行度そのものよりも、高齢者の実数が増えるかどうかと人口規模の方が、需要の向きとよく対応しています。

この記事で言えること・言えないこと

  • 指数は2025年を基準とした相対的な需要の増減であり、患者数やクリニックの売上・収益の予測ではありません。
  • 受療率は令和5年患者調査の全国値を全年齢で固定しており、将来の受療行動の変化・技術進歩・診療報酬改定は反映していません。白内障手術など術式や提供体制の変化も織り込んでいません。
  • 将来人口は社人研「令和5年推計」の中位仮定という1シナリオです。
  • 「共通点」は増える自治体に多く見られる条件であり、因果関係の証明ではありません。また、条件を満たせば需要が増えるという意味でもありません(65歳以上の実数が増える自治体の約半数では需要指数が100を下回ります)。
  • 自治体単位・年齢構成による相対評価であり、個別の立地の良否や競合状況は含みません。実際の判断は、需要の向きに加えて競合の届出実数や現地の条件と合わせて見る必要があります。

お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。

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本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:社人研R5推計(中位) / 令和5年患者調査(眼科・内科の外来受療率, 2023)。