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開業コラム

「高齢化が進むこれからは開業しても患者は増える」を政府データで検算する — 内科の外来需要は全国の約65%の自治体で2025年がピーク、増え続けるのは14%

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日本はこれから高齢化が進むから、開業しても患者は増えていく——開業を考えるとき、こう聞くことは多い。高齢者ほど外来にかかる回数が多いのは患者調査でも確かで、「高齢化=外来需要の追い風」という見立て自体は間違いではない。

ただし追い風には向きと「賞味期限」がある。高齢者の数そのものが永遠に増え続けるわけではなく、多くの地域では高齢者数がいずれ頭打ちになり、減少に転じる。そこで今回は「内科の外来需要が何年にピークを迎えるか」を全国1,884自治体(政令指定都市20市は親市コードを除き行政区で計上)で1つずつ計算し、その分布を見てみる。

計算の方法(意見ではなく計算)

使うデータは2つだけ。

  • 社人研「令和5年推計」(中位仮定)の将来人口。5歳階級別に2025年から2050年まで5年刻み。
  • 令和5年患者調査の外来受療率(年齢階級別・全国値)。

外来需要は次の式で出す。

ある年の需要 = Σ〔その年齢の人口 × その年齢の外来受療率 ÷ 100,000〕

これを2025・2030・2035・2040・2045・2050の6時点で計算し、需要が最も大きくなる年をその自治体の「需要ピーク年」とした。ピーク年が2025年なら、その自治体は今が需要のピークで、以降は減少局面に入るという意味になる。以下の数字は意見ではなく、この式の計算結果である。

結果:全国の3分の2は「もうピーク」

内科の外来需要がピークを迎える年を1,884自治体で数えると、次のように分かれた。

内科の外来需要がピークを迎える年(全国1,884自治体の分布)自治体の割合(%)
65.32025年102030年4.52035年3.32040年2.82045年14.12050年
需要ピーク年自治体数割合意味
2025年1,23165.3%すでにピーク(以降は減少局面)
2030年18810.0%あと5年で頭打ち
2035年844.5%
2040年633.3%
2045年522.8%
2050年26614.1%推計の最終年まで増加が続く

全国1,884自治体のうち、内科の外来需要が2025年時点ですでにピークを過ぎている自治体は1,231(65.3%)。2030年までに頭打ちになる自治体まで含めると75.3%に達する。一方、2050年まで需要が増え続ける自治体は266(14.1%)にとどまる。

補足として、全国を合計した総需要でみると、2025年を100として2035年の100.5が最も高く、その後2050年は96.8へ緩やかに下がる。全国合計では「ほぼ横ばい」だが、これは需要が伸びる都市と減る地方が相殺した結果であって、大多数の自治体で需要が伸び続けるという意味ではない。

機序:ピークの時期は人口規模で大きく違う

どんな自治体が早くピークを迎え、どんな自治体が遅くまで伸びるのか。2025年の人口規模で4つに分けると、はっきりした勾配が出る。

人口規模別・2025年時点ですでに需要ピークを過ぎた自治体の割合%
14.620万人以上395〜20万人69.32〜5万人892万人未満
2025年の人口規模自治体数2025でピーク済2050まで増加継続
20万人以上15814.6%48.7%
5〜20万人49839.0%27.5%
2〜5万人40169.3%8.2%
2万人未満82789.0%2.3%

人口2万人未満の自治体では89.0%がすでに需要ピークを過ぎており、2050年まで増え続けるのは2.3%しかない。逆に人口20万人以上では、まだ48.7%が2050年まで需要が伸びる計算になる。若年層・中年層の厚みが残る大都市では、高齢者の実数が積み上がる余地がまだあるためと読める。同じ「高齢化」でも、小規模自治体では高齢者の数自体がすでに減り始めており、追い風は先に息切れする。

内科は高齢層の受療率が高い科なので、この傾向はとくに出やすい。関連する検算として、規模別に内科の需要勾配を見た「地方は高齢化だから内科は患者が増える」を政府データで検算するも併せて読むと、規模と時期の両面から需要の見取り図が取れる。

言えること・言えないこと

言えること

  • この前提(社人研 中位推計 × 令和5年患者調査の全国受療率)では、内科の外来需要は全国の65.3%の自治体で2025年がピークで、以降は減少局面に入る計算になる。
  • ピークの時期は人口規模で大きく異なり、小規模自治体ほど早い。

言えないこと

  • 指数は2025年を100とした需要の相対的な推移であって、患者数の実数やクリニックの売上を予測するものではない。
  • 外来受療率は全国値で固定しており、将来の受診行動の変化(オンライン診療の普及など)は反映していない。
  • これは中位推計という1つのシナリオに基づく。出生・移動の仮定が変われば結果も動く。
  • 需要のピーク年だけで開業の可否は決まらない。競合の数や立地など、ここで扱っていない要素と併せて判断する必要がある。

お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。

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本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:社人研R5推計(中位) / 令和5年患者調査。