開業コラム
「高齢化する地方ほど整形外科は伸びる」を政府データで検算する — 外来需要が2035年も増える自治体は全国の23%、その7割は人口5万人以上の都市
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「高齢化する地方ほど整形外科は伸びる」と言われるが
開業でよく聞く見立てに「整形外科は高齢者の科だから、高齢化が進む地域ほど患者が増える」というものがあります。膝・腰・骨折など加齢とともに増える主訴が中心なので、高齢化率が上がる地方こそ有望だ、という理屈です。この見立てが将来人口の動きと噛み合うのかを、政府データだけで検算します。
使ったデータと「指数」の定義(意見ではなく計算)
- 将来人口: 国立社会保障・人口問題研究所「令和5年推計」中位仮定(全国1,884自治体・政令指定都市20市は親市コードを除き行政区で計上・5歳階級)。
- 年齢別の外来受療率: 厚生労働省「令和5年患者調査」の整形外科・外来受療率(人口10万対、全国値・全年齢固定)。
各自治体の外来需要を 需要 = Σ_年齢層( 人口 × 受療率 ÷ 100,000 ) で求め、2025年を100として 指数 = 需要(2035) ÷ 需要(2025) × 100 を計算します。指数は患者数の絶対予測ではなく、その自治体で年齢構成の変化が外来需要を相対的に押し上げるか押し下げるかを見る指標です。
結果:整形外科の需要が増えるのは全国の22.6%、都市に偏る
1,884自治体を計算すると、2035年に整形外科の外来需要指数が100以上(=2025年より増える)自治体は 426、全体の22.6% でした。指数の中央値は 94.3、平均は94.0、範囲は65.9〜120.1です。参考までに同じ計算で内科は29.2%、小児科は1.5%の自治体で需要が増えます。整形外科は「多くの地域で伸びる科」ではなく、7割超の自治体ではむしろ需要が縮む方向です。
さらに、需要が増えるかどうかは人口規模で大きく割れます。
| 人口規模(2025年) | 自治体数 | 需要が増える自治体の割合 | 需要指数の中央値 |
|---|---|---|---|
| 20万人以上 | 158 | 65.8% | 102.0 |
| 5〜20万人 | 498 | 39.0% | 98.6 |
| 2〜5万人 | 401 | 17.7% | 94.0 |
| 2万人未満 | 827 | 6.9% | 88.8 |
需要が増える426自治体のうち 298(70.0%)は人口5万人以上の都市でした。通説が想定する「高齢化が最も進む小規模自治体」は、むしろ需要が縮む側に多く並びます(2万人未満で需要が増えるのは6.9%)。開業場所を将来人口の面から見る視点は開業場所の選び方でも扱っています。
なぜ「高齢化=整形外科が伸びる」と噛み合わないのか
受療率の年齢プロファイルを見ると理由が見えます。整形外科の外来受療率(人口10万対)は加齢とともに上がりますが、80〜84歳の2,501でピークを打ち、85〜89歳は2,193、90歳以上では1,464へ下がります。一方、内科は90歳以上でも3,358と上がり続けます。
| 年齢層 | 整形外科の受療率(10万対) | 内科の受療率(10万対) |
|---|---|---|
| 70〜74歳 | 1,672 | 2,452 |
| 75〜79歳 | 2,168 | 2,938 |
| 80〜84歳 | 2,501 | 3,261 |
| 85〜89歳 | 2,193 | 3,273 |
| 90歳以上 | 1,464 | 3,358 |
小規模自治体で今後増えるのは主に85歳以上の後期高齢者ですが、整形外科の受療率はこの層で頭打ち・低下します。つまり「高齢者が増える」ことと「整形外科の外来が増える」ことは、最高齢層では一致しません。整形外科の需要が相対的に残りやすいのは、後期高齢者だけでなく60〜80代前半の実数がある程度の規模で保たれる都市部で、これが規模別の勾配(20万人以上で65.8%、2万人未満で6.9%)として表れます。
この記事で言えること・言えないこと
- 指数は2025年を基準とした相対的な需要の増減であり、患者数やクリニックの売上・収益の予測ではありません。
- 受療率は令和5年患者調査の全国値を全年齢で固定しており、将来の受療行動の変化・技術進歩・診療報酬改定は反映していません。
- 将来人口は社人研「令和5年推計」の中位仮定という1シナリオです。
- 需要が増える/縮むは自治体単位・年齢構成による相対評価で、個別の立地の良否や競合状況は含みません。実際の開業判断は、この需要の向きに加えて競合の届出実数や現地の条件と合わせて見る必要があります。
お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。
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