開業コラム
「都会は安泰、地方は先細り」を政府データで検算する — 内科の外来需要が2035年も伸びる県は47のうち14
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開業地を考えるとき、「都市部は人口が多いから内科は安泰、地方は人口減で先細り」という語られ方をよく耳にします。全国の内科の外来需要は2035年でも2025年比101.0とほぼ横ばい、むしろわずかに増える計算です。ではこの「横ばい」は、どの県でも同じように成り立つのでしょうか。都道府県の単位で分けて計算してみます。
これは意見ではなく計算です
使うデータは2つだけです。
- 将来人口:社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の令和5年推計・中位仮定。2025年と2035年の5歳階級別人口を、市区町村ごとに都道府県へ合算しました。
- 外来受療率:厚労省・令和5年患者調査の内科の年齢階級別 外来受療率(人口10万対、全国値)。
外来需要指数は、各年齢層の人口にその年齢の受療率を掛けて足し上げた「外来需要」を、2025年を100として2035年がいくつになるかで表します。つまり 需要指数=年齢で重みづけした人口の推移 です。売上でも患者数の予測でもなく、需要の相対的な増減だけを見ています。
内科の受療率は高齢層で跳ね上がります(20〜24歳が人口10万対198に対し、90歳以上は3,358と約17倍)。そのため内科の需要指数は、実質的に「高齢層の人口がこれから増えるか減るか」でほぼ決まります。
結果:全国は101.0でも、伸びる県は47のうち14
都道府県ごとに2035年の内科需要指数を計算すると、最高108.5(沖縄)から最低91.5(秋田)まで、17.0ポイントの幅に広がりました。全国合計では101.0(微増)ですが、これは人口の大きい東京・神奈川などが押し上げた加重平均で、県の単位では47のうち33(約7割)が100を下回ります。県ごとの指数の中央値は98.4で、「中位の県ではむしろ需要が減る」という姿です。
需要が最も粘る上位7県:
| 順位 | 都道府県 | 2035指数(2025=100) |
|---|---|---|
| 1 | 沖縄 | 108.5 |
| 2 | 東京 | 106.3 |
| 3 | 神奈川 | 105.4 |
| 4 | 埼玉 | 103.8 |
| 5 | 滋賀 | 103.7 |
| 6 | 宮城 | 103.4 |
| 7 | 愛知 | 103.1 |
需要が最も落ちる下位7県:
| 順位 | 都道府県 | 2035指数(2025=100) |
|---|---|---|
| 47 | 秋田 | 91.5 |
| 46 | 高知 | 93.5 |
| 45 | 山口 | 93.6 |
| 44 | 青森 | 94.3 |
| 43 | 岩手 | 94.4 |
| 42 | 島根 | 94.6 |
| 42 | 山形 | 94.6 |
上位には大都市圏(東京・神奈川・埼玉・愛知)に加え、沖縄・滋賀・宮城が並びます。下位は東北・山陰・四国の県が占めました。
なぜ「全国は横ばい」なのに県で割れるのか
内科需要が高齢層の人口でほぼ決まる以上、指数の差は「その県で高齢層(65歳以上)の実数がまだ増えるか、すでに減り始めたか」に対応します。実際、同じ推計で65歳以上人口の2035年指数(2025=100)を見ると、方向がはっきり分かれます。
| 都道府県 | 65歳以上人口指数 | 総人口指数 | 内科需要指数 |
|---|---|---|---|
| 沖縄 | 113.2 | 99.2 | 108.5 |
| 神奈川 | 112.9 | 98.5 | 105.4 |
| 東京 | 112.4 | 101.8 | 106.3 |
| 青森 | 96.9 | 86.1 | 94.3 |
| 高知 | 93.6 | 87.7 | 93.5 |
| 秋田 | 91.8 | 84.6 | 91.5 |
上位県では総人口が横ばい〜微減でも、65歳以上が2035年にかけて1割以上増えます(沖縄+13.2%、東京+12.4%)。受療率の高い年齢層が増えるので、内科需要も上向きます。下位県は逆に、高齢層の実数がすでにピークを越えて減少に転じており(秋田−8.2%、高知−6.4%)、総人口の落ち込み(秋田−15.4%)と合わせて需要が縮みます。「地方=高齢化で内科は安泰」という語りは、高齢者の“割合”は上がっても“実数”はもう減り始めている県では成り立たない、ということです。
同じ内科でも、県内の市区町村や人口規模でさらに需要は割れます。人口規模で見た内科需要の勾配は、「地方は高齢化だから内科は患者が増える」を政府データで検算するで扱いました。
言えること・言えないこと
- 言えること:内科の外来需要は、全国では2035年も横ばい(101.0)だが、都道府県の単位では47のうち33が100を下回り、最高108.5〜最低91.5と17.0ポイントの幅で割れる。上位は高齢層の実数がまだ増える県、下位は高齢層がすでに減り始めた県で、方向は65歳以上人口の増減に対応している。
- 言えないこと:この指数は2025年を100とした相対的な需要の推移であって、患者数やクリニックの売上の予測ではありません。受療率は令和5年患者調査の全国値で固定しており、将来の医療のかかり方の変化は反映していません。人口は社人研 令和5年推計の中位仮定という1つのシナリオです。都道府県の指数は県内の合算値なので、同じ県の中の市区町村差はこの数字だけでは分かりません。
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