開業コラム
クリニックスタッフの給料相場|看護師・医療事務・理学療法士の月給と、人件費はいくらになるか
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開業を準備する医師から必ず出るのが「看護師や受付にいくら払えばいいのか」という問いです。求人サイトを見れば平均年収は出てきます。ただ、その数字をそのまま事業計画の人件費欄に写すと、たいてい少なく見積もることになります。結論から言うと、求職者が見る「年収」と、開業医が負担する「人件費」は別物だからです。相場は「求人の目安」としてではなく、「毎月出ていく固定費」として捉え直す必要があります。
職種別の給料相場(看護師・医療事務・理学療法士)
まず、全国平均の目安を押さえます。いずれも病院を含む全職場の平均で、クリニック単体・地域・雇用形態によって幅が出る点は後述します。
| 職種 | 月例賃金の目安 | 年収の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 看護師 | 約34万円/月 | 約490万円 | 年間賞与は年により約80〜86万円 |
| 医療事務 | 約25〜31万円/月 | 約370万円 | パート時給は約1,000〜1,280円と幅が大きい |
| 理学療法士 | 約30万円/月 | 約430万円 | 初任給は約25万円、平均年齢35歳前後 |
看護師は厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」で、きまって支給する現金給与額が月約34.8万円、平均年収は約489万円とされます。理学療法士は同調査系の集計で平均年収が約432万円、月額に換算すると約30万円が目安です。医療事務は公的統計の独立区分が薄いため民間求人集計に依存しますが、平均年収は約369万円、月給換算で約31万円、正社員とパートで実態が大きく分かれます。
数字にレンジがあるのは、出典によって対象(病院かクリニックか、常勤かパートか)が違うためです。ここでは幅のまま示しています。
なぜ「平均年収」だけ見ると人件費を読み違えるのか
年収の平均には、すでに賞与が含まれています。看護師の平均年収約490万円のうち、80万円前後は賞与です。開業初年度に賞与をどう扱うか(満額・按分・見送り)で、初年度の人件費は大きく変わります。
そして見落とされやすいのが、給与とは別に事業主が負担する法定福利費です。健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の事業主負担を合計すると、一般的な目安として給与額の約15〜16%が上乗せされます。つまり、求人票に「月給30万円」と書いた瞬間、事業計画上の負担は月約35万円になります。
「相場どおりに払っているのに資金繰りが苦しい」という声の多くは、この上乗せ分と賞与原資を計画に織り込んでいないことに起因します。
月給から「事業計画上の人件費」への換算
相場を固定費に落とすと、1人あたりの月次負担はおおむね次のようになります(法定福利費を約16%として試算した目安で、実額は加入区分や自治体で変わります)。
| 職種 | 月給の目安 | 法定福利費込みの月次負担 | 賞与原資(年) |
|---|---|---|---|
| 看護師 | 約34万円 | 約39万円 | 約80万円前後 |
| 医療事務(常勤) | 約25万円 | 約29万円 | 約40〜60万円 |
| 理学療法士 | 約30万円 | 約35万円 | 約50〜70万円 |
たとえば看護師2名・医療事務2名の体制なら、法定福利費込みの月次人件費だけで130万円を超え、これに賞与原資が年間で数百万円乗ります。何人をどのタイミングで雇うか、パートで薄く広く配置するかは、相場そのものより資金計画への影響が大きい論点です。人員構成と充足率の考え方はクリニックのスタッフ採用と人件費で別途整理しています。
相場には地域差がある
もう一点、平均額は全国値である点に注意が必要です。同じ看護師でも、都道府県によって月例賃金には差があります。都市部は募集賃金が高く出やすく、地方は相対的に低い傾向がありますが、地方でも人材が採りにくい地域では相場が上振れすることもあります。
したがって、事業計画に使うべきは「全国平均」ではなく「開業予定地の相場」です。実務的には、開業予定地の求人媒体で同職種・同条件の募集額を数件確認し、その中央値あたりを基準に、法定福利費と賞与原資を上乗せして計画に落とすのが堅実です。
まとめ
給料相場を調べるとき、求人目線の「年収」をそのまま写すと、賞与と法定福利費のぶんだけ人件費を過小に見積もります。相場は「いくらで募集できるか」の目安であると同時に、開業後に毎月出ていく固定費の設計値でもある——この二重性を意識するだけで、資金計画の精度は上がります。
看護師なら月約34万円、そこに法定福利費約16%と賞与原資を乗せる。この積み上げを、全国平均ではなく開業予定地の相場で行うことが出発点です。そして、その予定地に十分な患者需要があるか、競合はどれだけいるかは、公的データで無料で確認できます。人件費という固定費を賄えるだけの来院が見込めるか——その裏付けを取ることが、採用計画の前提になります。
お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。
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AI診療圏分析レポートを作成(無料)※ 本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:厚生労働省『賃金構造基本統計調査(令和5年)』の看護師・理学療法士区分(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html、2026-07-24取得)を主たる公的統計として使用。医療事務は独立した公的区分が乏しいため、民間の求人・給与集計(求人ボックス給料ナビ等、2026-07-24取得)を参照した参考値。法定福利費約15〜16%は健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の事業主負担の一般的な目安であり、加入区分・自治体により変動する。本文中の月次人件費は当社収支シミュレーターと同種の前提(法定福利費率16%)に基づく試算値であり、特定の医院の実額や採用結果を保証するものではない。制度・数値は将来変更され得る。