開業コラム
クリニックの人材紹介料はいくらか|看護師76万・医師350万と、採用コストが『回転する』話
公開日:
開業の資金計画では、機器や内装は相見積もりを取って詰めるのに、スタッフの採用コストは「求人を出せばなんとかなる」と軽く見積もられがちです。ところが人材紹介会社を使うと、看護師1人で平均76万円、医師なら数百万円が一度に出ていきます。しかも、結論から言うと、この費用は「一度払えば終わり」ではありません。紹介経由の採用は早期離職が起きやすく、辞められればまた同じ額がかかる——採用コストは、初期費用というより「回転しうるコスト」として計画に載せるべきものです。
職種別の紹介料相場
人材紹介の手数料は、多くが「採用した人の理論年収 × 手数料率」で決まる成功報酬型です。職種別の目安は次のとおりです。
| 職種 | 手数料率の目安 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 看護師 | 理論年収の20〜35%(クリニックは20〜25%が多い) | 平均約76万円 |
| 医師 | 案件により大きく変動 | 平均約350万円(100〜600万円) |
| 医療事務 | 事務職として30〜35%程度 | 求人媒体なら数万〜十数万円と大きく差 |
看護師は年収500万円で手数料20%なら100万円です。小規模クリニックは1件あたりの採用数が少ないぶん料率が高めに出やすい傾向もあります。医療事務のように求人媒体で採りやすい職種は、媒体経由なら採用単価を大きく抑えられます。どの職種を、紹介と媒体のどちらで採るかで、総額は数十万円単位で変わります。
なぜ「一度きり」ではないのか
紹介料が回転しうる、と書いた理由は返金規定にあります。人材紹介には一般に90日程度の保証期間があり、その期間内の早期退職なら手数料の一部が返金されます(入社1ヶ月以内で8割、1〜3ヶ月で5割程度が目安)。裏を返せば、保証期間を過ぎてから辞められた場合、支払った紹介料は戻ってきません。
さらに、福祉医療機構の調査では、人材紹介会社経由で採用した医療従事者は、高額な手数料にもかかわらず離職率が高い傾向が報告されています。紹介会社の多くは誠実に人材を紹介してくれますが、構造として「入社時点で報酬が確定し、定着は別問題」になりやすいことは知っておく価値があります。つまり、一度の採用で終わらず、離職のたびに次の紹介料が発生しうる、ということです。
採用チャネルによる費用の違い
同じ1人を採るのでも、どのチャネルを使うかで一時費用は大きく変わります。おおまかな費用感は次のとおりです。
| チャネル | 一時費用の目安 | 向いている職種 |
|---|---|---|
| 求人媒体(有料掲載) | 数万〜十数万円 | 医療事務・受付など応募が集まりやすい職種 |
| ハローワーク | 原則無料 | 地域採用・時間はかかる |
| 人材紹介 | 理論年収の20〜35% | 看護師・医師など採りにくい職種 |
紹介は「採りにくい職種を確実に」の局面で効きますが、費用は媒体の10倍以上になり得ます。全ポジションを紹介で埋めると採用費だけで数百万円に達するため、職種ごとにチャネルを使い分けるのが定石です。
資金計画での見積もり方
以上を踏まえると、採用コストは「開業時に一度だけ」ではなく、開業後も一定の頻度で発生しうるものとして持っておくのが安全です。たとえば開業時に看護師2名を紹介で採ると約150万円。ここで1名が保証期間を過ぎた半年後に離職して補充すれば、さらに約76万円が乗り、開業1年で看護師の採用費だけで220万円を超えることも起こり得ます。この「回転」を初期の1回分しか見ていないと、資金繰りが想定から外れます。実務的には次の切り分けが効きます。
- 開業時の初期採用枠(人数 × 職種別の紹介料)を固定費として計上する
- そこに、早期離職・欠員補充に備えた回転バッファを別途見ておく
- 媒体で採りやすい職種は媒体を優先し、紹介は採りにくい職種に絞る
採用の全体像(何人をどのタイミングで雇うか、人件費率の考え方)はクリニックのスタッフ採用と人件費で整理しています。紹介料はそこに乗る一時費用として捉えると、計画に落としやすくなります。
まとめ
紹介料は看護師で平均76万円、医師で数百万円と、開業の資金計画で無視できない一時費用です。しかも保証期間を過ぎた離職では返ってこず、紹介経由は定着しにくい傾向もあるため、「一度きり」ではなく回転しうるコストとして見るのが現実的です。
結局のところ、効くのは紹介料の安さより、人が辞めない体制です。ただ、その前提として、そもそも採用したスタッフを養えるだけの患者が来るのか——という問いが先にあります。開業予定地の需要と競合は、公的データで無料で確認できます。採用計画は、その裏付けの上に初めて意味を持ちます。
お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。
関連するコラム
AI診療圏分析レポートを無料作成
競合クリニックの一覧・年齢構成・AIによる将来性/リスク分析・総合評価を含む詳細レポートを、その場で無料生成できます。営業電話は一切ありません。
AI診療圏分析レポートを作成(無料)※ 本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:人材紹介手数料の相場(看護師=理論年収の20〜35%・平均約76万円、医師=平均約351.7万円、事務職=30〜35%)および保証期間・返金規定(一般に90日、1ヶ月以内退職で約8割・1〜3ヶ月で約5割返金)は、人材紹介・採用支援各社および業界解説記事の公開情報(2026-07-24取得)に基づく業界相場であり、公的統計ではない参考値。紹介経由の医療従事者の離職傾向は独立行政法人福祉医療機構(WAM)の調査報告(GemMed等が紹介、2026-07-24取得)を参照。手数料率・返金規定は紹介会社ごとの契約により異なり、本文の金額は特定の採用結果や費用を保証するものではない。当社収支シミュレーターの採用単価前提(看護師約76万円等)と同種の数値を扱う。