開業コラム
内視鏡クリニックは開業で採算が取れるか|『単価が高い=儲かる』ではない理由
公開日:
消化器内科の開業を考えるとき、内視鏡は「高収益の柱」として語られます。大腸内視鏡は1件あたりおよそ15,500円と、通常の外来診療の何倍もの単価があるからです。ところが、結論から言うと、単価が高いことは「儲かる」を意味しません。内視鏡の採算を決めるのは単価ではなく、1日に何件こなせるか(件数)、重い初期投資をどれだけの期間で回収するか、そして専従スタッフを含む体制を維持できるか——この3つです。単価の高さだけを見て内視鏡開業に踏み切ると、投資の重さと件数の立ち上がりの遅さに足をすくわれます。
内視鏡の診療報酬
まず単価の側を押さえます。内視鏡検査の診療報酬の目安は次のとおりです(1点=10円)。
| 検査 | 点数の目安 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 上部消化管内視鏡(胃カメラ) | 1,000点台前半 | 約11,000円前後 |
| 下部消化管内視鏡(大腸カメラ) | 約1,550点 | 約15,500円 |
ここに、病変があれば処置(生検・ポリープ切除等)、病理検査、鎮静剤などの加算が乗ります。確かに外来単価の数倍で、単価だけ見れば魅力的です。ただし、この単価を成立させるための土台が重いのです。
初期投資と体制の重さ
内視鏡診療は、機器も施設も人も、通常の内科より重くなります。
- 医療機器: 内視鏡システム(上部・下部)、洗浄消毒機などで2,500〜3,500万円が目安。一般内科の1,000〜1,500万円の倍以上です。
- 施設要件: 検査室に加え、前処置・回復のスペースや複数のトイレなど、動線を考えた広い設計が必要で、内装費も上がります。
- 人: 検査の介助・洗浄を担う専従の看護師や技師が要り、人件費が上乗せされます。
つまり内視鏡は、単価が高い一方で、固定費(減価償却・人件費)と変動費(材料・洗浄コスト)の両方が重い診療です。機器費の考え方は内科クリニックの設備・医療機器費用もあわせてご覧ください。
件数は一足飛びには積み上がらない
もう一つの落とし穴が、件数の立ち上がりです。内視鏡の件数は、開業した翌月からフル稼働するわけではありません。近隣の医療機関からの紹介や、受けた患者の口コミが積み上がって、少しずつ枠が埋まっていきます。定常的な件数に届くまで、1〜2年単位の時間がかかることも珍しくありません。
高額な機器の返済は開業直後から始まるのに、それを賄う件数は後からついてくる——このズレが、内視鏡開業のキャッシュフローを苦しくします。立ち上がりの考え方は診療科別の立ち上がりスピードで扱っています。
採算は「件数」で決まる
以上を、簡単なモデル試算で見ます。上部・下部を1日合わせて10件こなせれば、内視鏡分の売上は1日およそ13万円、月20日で約260万円です。これが1日5件なら約130万円と半分になります。一方、機器3,000万円を6年で償却すれば減価償却だけで月約42万円、これに専従人件費と材料費が乗ります。内視鏡は予約制の検査枠で回すため、枠がどれだけ埋まるか(稼働率)がそのまま採算に直結し、空き枠は固定費だけを垂れ流します。
つまり、件数が5件か10件かで、固定費を賄えるかどうかが分かれるのです。単価は保険点数で決まっていて動かせないので、採算の変数は結局「1日の件数」に集約されます。
もう一つ注意したいのは、内視鏡は変動費率が通常の外来より高いことです。処置具・鎮静剤・洗浄消毒の資材など、1件ごとにかかる材料コストが積み上がるため、単価が高くても手元に残る限界利益は、単価ほどには大きくなりません。「単価15,500円がまるまる利益」ではない、という点は見落とされがちです。そして件数を決めるのは、その地域に内視鏡を必要とする患者がどれだけいて、競合の内視鏡枠がどれだけ埋まっているか——需要と競合です。
まとめ
内視鏡は単価の高い診療ですが、「単価が高い=儲かる」ではありません。機器・施設・人の初期投資が重く、その回収を支える件数は開業直後には積み上がらないからです。採算を決めるのは単価ではなく、1日の件数です。
だからこそ、内視鏡開業の可否は、その立地に内視鏡需要が十分あるかで決まります。人口構成(年齢が高いほど内視鏡需要は厚い)や競合の状況は、公的データで無料で確認できます。高額な機器を入れる前に、その件数が見込める立地かどうかを確かめることが、内視鏡開業の最初の分岐点になります。
お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。
関連するコラム
AI診療圏分析レポートを無料作成
競合クリニックの一覧・年齢構成・AIによる将来性/リスク分析・総合評価を含む詳細レポートを、その場で無料生成できます。営業電話は一切ありません。
AI診療圏分析レポートを作成(無料)※ 本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:内視鏡機器の導入費(消化器内科で2,500〜3,500万円)・総開業資金は開業支援各社の公開情報(2026-07-24取得)に基づく業界相場の参考値。診療報酬点数(下部消化管内視鏡 約1,550点、上部は1,000点台前半の目安、1点=10円)は医科診療報酬点数表(2024年改定・しろぼんねっと等、2026-07-24取得)に基づくが、加算・処置により実際の算定は変動する。本文中の月商・件数・減価償却の数値は前提を置いたモデル試算であり、特定の医院の採算を保証するものではない。当社収支シミュレーターの内視鏡単価・件数・変動費率の前提と同種の数値を扱う。制度・点数は改定で変更され得る。