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開業コラム

医療機器と内装の減価償却|『現金は出ないのに費用』が資金繰りをズラす

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開業時、医療機器と内装に数千万円を投じます。この大きな支出は、その年に一度で経費になるわけではなく、「耐用年数」で分けて毎年少しずつ費用化されます。これが減価償却です。ここで、開業計画で必ずつまずくポイントがあります。結論から言うと、減価償却は「現金は出ていかないのに費用になる」ものであり、その正反対が「現金は出ていくのに費用にならない」借入元本の返済です。この2つが、損益(もうけ)と資金繰り(手元現金)をズラします。黒字なのに資金が苦しい、という開業初期の典型は、ここから生まれます。

耐用年数の目安

まず、何を何年で償却するのかの目安です。国税庁の耐用年数表に基づく代表的なものを挙げます。

資産耐用年数の目安
レントゲン等(移動式・救急用・血液分析器)4年
その他の医療機器(一般)6年
内視鏡(ファイバースコープ)6年
手術機器・調剤機器等6〜8年
内装・造作(賃借物件)用途・構造により概ね10〜15年

同じ「医療機器」でも種類で年数が違い、内装は建物本体の耐用年数をそのまま使えず、造作として見積もります。つまり、投資額をひとまとめに「◯年で償却」とはできず、資産ごとに分かれます。なお中古で購入した機器は、法定の耐用年数より短い年数で償却できる場合があり、その年の費用計上を前倒しできることもあります。

減価償却の正体——現金は出ないのに費用になる

たとえば600万円の機器を耐用年数6年で定額償却すると、毎年100万円が費用に計上されます。現金600万円が出ていくのは購入した初年度だけで、2年目以降は現金が出ていかないのに、100万円の費用が損益計算書に乗り続けます。

これは開業初期には有利に働きます。大きな投資をした年でも、費用計上は分散されるため、利益(したがって税金)が一度に大きく振れません。支出のタイミングと費用のタイミングがズレる——これが減価償却の本質です。

対になるのが借入元本の返済

問題は、その裏側です。開業資金を借入で賄った場合、毎月の返済のうち利息は経費になりますが、元本は経費になりません。現金は確実に出ていくのに、損益には表れないのです。

ここで効いてくるのが、次の関係です。

借入返済の原資 = 利益 + 減価償却費

減価償却費は現金が出ない費用なので、その分は手元に残り、返済に回せます。逆に言えば、返済額が「利益+減価償却費」を上回ると、帳簿が黒字でも現金は減っていきます。医療機関でも、業績は黒字なのに過大な返済が資金繰りを圧迫する例は少なくありません。この損益と現金のズレは開業後のキャッシュフロー管理の中心テーマでもあります。

だから「黒字なのに苦しい」が起きる

減価償却(現金は出ないが費用)と元本返済(現金は出るが費用でない)——この2つが噛み合わないと、損益と資金繰りは一致しません。損益計算書だけを見て「黒字だから大丈夫」と判断すると、手元現金の減少を見落とします。

数字で見ると分かりやすくなります。ある年の利益が300万円、減価償却費が200万円なら、返済に回せる原資は合計500万円です。ここで年間の元本返済が400万円なら手元に100万円残りますが、返済が600万円なら、帳簿は黒字でも現金は年100万円減っていきます。開業直後は投資が大きく減価償却費も大きいため、この均衡が特に効きます。借入期間を短くして返済を急ぐと、原資を返済が上回りやすくなる、という関係です。

なお、初年度の負担を軽くする実務的な選択肢もあります。取得価額30万円未満の資産は、中小事業者の特例により一括で経費にできる場合があり、少額の備品はこれで初年度に落とせます。何を資産計上し、何を一括で落とすかは、初年度の利益と資金繰りの両方に効く判断です。機器投資の実額の目安は内科クリニックの設備・医療機器費用で扱っています。

まとめ

減価償却は「現金は出ないのに費用になる」もの、借入元本返済は「現金は出るのに費用にならない」もの。この対の関係が、損益と資金繰りをズラす正体です。返済の原資は「利益+減価償却費」であり、返済がこれを超えれば黒字でも現金は減ります。

開業計画では、損益(もうかるか)と資金繰り(現金が回るか)を必ず分けて見ることが要ります。そして、そのどちらの前提にもなるのが患者数——つまり立地の需要です。開業予定地にどれだけの需要があるかは、公的データで無料で確認できます。損益と資金繰りをそろえて設計できて初めて、その計画は現実の資金繰りに耐えます。

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本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:耐用年数(医療機器4〜8年・レントゲン等4年/その他6年・内視鏡6〜8年、内装造作は用途・構造により概ね10〜15年)は国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』および耐用年数省令(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm、2026-07-24取得)に基づく。取得価額30万円未満の少額減価償却資産の特例は中小事業者向け措置法の解説(2026-07-24取得)を参照した目安で、適用要件は各年度の税制による。本文中の利益・減価償却費・返済額の数値は関係を示すためのモデル試算であり、特定の医院の税額や資金繰りを保証するものではない。当社収支シミュレーターの減価償却前提(機器6年・内装造作の年数)と同種の数値を扱う。個別の資産区分・償却方法は税理士・所轄税務署の確認を要する。