開業コラム
「オフィス街は昼間の患者が多い」を国勢調査で検算する — 昼間人口が流入する自治体は全国1,883のうち67(3.6%)、66.8%は流出型
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開業でよく言われること
「駅前やオフィス街は昼間人口が多いから、住民登録上の人口より患者が来る」。診療圏を考えるときによく出てくる話です。実際に、昼間の人口が夜間の人口を上回る街は存在します。
ただし、この話が診療圏の判断に効くのは、検討している街がその「流入型」に当たる場合だけです。では、流入型は全国にどれくらいあるのか。ここでは国勢調査の昼夜間人口比率で数えます。
使ったデータと計算方法
意見ではなく計算です。使ったデータと定義を先に出します。
- 昼夜間人口比率: 令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計(総務省統計局)。昼間人口÷夜間人口(常住人口)。1.00を上回れば昼間に人が流入、下回れば流出。
- 人口規模帯の区分: 国立社会保障・人口問題研究所 令和5年推計(中位仮定)の2025年推計人口。
- 集計対象: 1,883自治体。社人研推計の全1,904コードから政令指定都市20市の親市コードを除いた1,884自治体のうち、福島県浜通りの合算コード(07999)は個別市町村の昼夜間人口比率と接続できないため対象外としました。昼夜間人口比率の元表にある1,916件のうち、政令市の親市20件・東京都特別区部の合計1件・浜通りの12市町村は、この理由で使っていません。
- 呼び方: 本記事では便宜的に、比率1.20以上を「流入型」、1.00未満を「流出型」と呼びます。1.20という線は集計上の区切りであって、公式の定義ではありません。
結果
| 昼夜間人口比率 | 自治体数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1.20以上(流入型) | 67 | 3.6% |
| 1.10〜1.20 | 59 | 3.1% |
| 1.00〜1.10 | 500 | 26.6% |
| 0.90〜1.00 | 782 | 41.5% |
| 0.90未満 | 475 | 25.2% |
| 合計 | 1,883 | 100.0% |
分布の中心は1.00をわずかに下回ります。中央値は0.967、四分位範囲は0.899〜1.016で、1.00未満が66.8%を占めます。流入型(1.20以上)は67自治体で3.6%、1.50以上は26自治体(1.4%)、2.00以上は10自治体でした。
平均は0.986ですが、最大値である東京都千代田区の13.554を1件除くと0.979に下がります。1,883件の平均が1件の極端値で0.007ポイント動くので、この指標は平均ではなく中央値と分布で見る必要があります。最小値は0.671でした。
人口規模帯で見る
| 人口規模帯(2025年推計) | 自治体数 | 比率の中央値 | 1.20以上 | 同 割合 | 0.90未満 割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万人以上 | 157 | 0.962 | 13 | 8.3% | 33.8% |
| 5〜20万人 | 498 | 0.961 | 26 | 5.2% | 24.7% |
| 2〜5万人 | 401 | 0.964 | 5 | 1.2% | 26.2% |
| 2万人未満 | 827 | 0.973 | 23 | 2.8% | 23.5% |
規模帯の自治体数は、他の記事で使っている1,884自治体基準(20万人以上158)から、上に書いた07999を除いた分だけ20万人以上が1件少なくなっています。
市区町村の区分で見る
| 区分 | 自治体数 | 比率の中央値 | 1.20以上 | 同 割合 | 1.00未満 割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京23区 | 23 | 1.036 | 10 | 43.5% | 47.8% |
| 政令市の行政区 | 175 | 0.954 | 28 | 16.0% | 65.1% |
| 市(政令市を除く) | 769 | 0.975 | 3 | 0.4% | 65.7% |
| 町村 | 916 | 0.960 | 26 | 2.8% | 68.4% |
なぜこうなるか
データで裏取りできる範囲だけを書きます。
1. 人口規模との連動が弱い。 中央値は20万人以上が0.962、5〜20万人が0.961、2〜5万人が0.964、2万人未満が0.973で、ほぼ横ばいです。規模が大きいほど昼間人口が流入する、という関係はこの集計では出ていません。人口規模で診療圏の性格が変わる論点は科によって伸びる街の規模は違うで扱いましたが、昼夜間比率については規模帯の差がほとんどありません。
2. 割れているのは「市」ではなく「区」の単位。 東京23区の中央値は1.036と1.00を上回りますが、23区のうち11区(47.8%)は1.00未満です。政令市の行政区は175区中114区(65.1%)が1.00未満で、中央値は0.954。大都市の中でも、昼間人口が流入するのは一部の区に限られ、周辺の区は流出側にあります。
3. 流入型は大都市だけの現象ではない。 流入型67自治体の内訳は、東京23区が10、政令市の行政区が28、市(政令市を除く)が3、町村が26でした。政令市を除く769市のうち1.20以上は3市(0.4%)にとどまる一方、町村は916件中26件(2.8%)が流入型です。ただし、町村側で何が昼間の流入を生んでいるかは、この比率データだけでは特定できません。
4. 母数としては小さい。 流入型67自治体の2025年推計居住人口は、集計対象の6.1%です。流入型を1件以上持つ都道府県は23で、残る24県には1件もありません。競合の密度を全国平均と比べる話は競合密度を届出実数で検算した記事にまとめていますが、昼間人口の流入で分母が変わる自治体は、その中でも限られた範囲です。
言えること・言えないこと
言えること。
- 昼夜間人口比率1.20以上の自治体は、集計対象1,883のうち67件(3.6%)。分布の中心は1.00をわずかに下回る(中央値0.967)。
- 人口規模帯で中央値はほとんど動かない(0.961〜0.973)。
- 東京23区・政令市の行政区でも、それぞれ47.8%・65.1%が1.00未満。
言えないこと。
- 昼間人口が多いことは、受診が多いことを意味しません。通勤・通学者が職場や学校の近くで受診するのか居住地で受診するのかは、このデータでは区別できません。
- この比率には年齢別の内訳がありません。年齢構成と受療率から計算する将来の外来需要指数に、この比率を掛け合わせることはできません。当サイトの需要指数は居住人口ベースで、昼間人口は反映していません。
- 令和2年(2020年)の1時点の値です。比率が今後どう変わるかは含みません。
- 市区町村単位の値であり、個別の立地や物件の評価ではありません。同じ自治体の中でも駅前と郊外では条件が違いますが、この粒度では分解できません。
お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。
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AI診療圏分析レポートを作成(無料)※ 本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:令和2年国勢調査 従業地・通学地による人口・就業状態等集計(総務省統計局) / 社人研R5推計(中位・2025年推計人口を人口規模帯の区分に使用)。