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開業コラム

泌尿器科は高齢化で本当に伸びるのか|全国1,884自治体を政府データで検算

公開日:

「泌尿器科は加齢疾患中心だから高齢化で伸びる」と言われるが

開業の検討でよく聞く見立てに「前立腺肥大や排尿障害など加齢とともに増える疾患が中心だから、泌尿器科は高齢化が進む地域ほど患者が増える」というものがあります。実際、泌尿器科の外来需要の約3分の2は65歳以上が占めます。ではこの見立てのとおり、高齢化が進むこれからは、どの地域でも泌尿器科の外来需要が増える方向に動くのか。増える地域には何か共通点があるのか。政府データだけで検算します。

使ったデータと「指数」の定義(意見ではなく計算)

  • 将来人口: 国立社会保障・人口問題研究所「令和5年推計」中位仮定(全国1,884自治体・政令指定都市20市は親市コードを除き行政区で計上・5歳階級)。
  • 年齢別の外来受療率: 厚生労働省「令和5年患者調査」の泌尿器科・外来受療率(人口10万対、全国値・全年齢固定)。

各自治体の外来需要を 需要 = Σ_年齢層( 人口 × 受療率 ÷ 100,000 ) で求め、2025年を100として 指数 = 需要(2035) ÷ 需要(2025) × 100 を計算します。指数は患者数の絶対予測ではなく、その自治体で年齢構成の変化が外来需要を相対的に押し上げるか押し下げるかを見る相対値です。受療率は全国値・全年齢固定で、男女別には分けていません。

結果:需要が増えるのは1,884自治体のうち525(27.9%)

泌尿器科の外来需要指数は、全国計では2035年に 100.2 と、総人口の指数(2035年 94.6)より高く、ほぼ横ばいで踏みとどまります。この水準は内科(100.5)に近く、加齢とともに需要が積み上がる科の性質がよく出ています。ただし全国計と自治体ごとの姿は一致しません。自治体単位の指数の中央値は 94.9、下位10%は83.6、上位10%は105.7、範囲は65.1〜121.1で、2035年に指数が100以上になる(=2025年より需要が増える)自治体は525、全体の27.9% でした。全国計が横ばいでも、自治体の7割強では需要が2025年より縮む計算です。

同じ計算で他の科の「増える自治体の割合」を並べると、内科29.2%、泌尿器科27.9%、整形外科22.6%、眼科18.9%、消化器内科18.4%、小児科1.5%です。泌尿器科は内科に次いで需要が残りやすい部類に入ります(科ごとの比較は10年後も需要が残る科・縮む科の検算で扱っています)。

増えるか減るかは、人口規模で大きく割れます。

泌尿器科の外来需要が2035年に増える自治体の割合・人口規模別%
77.220万人以上49.85〜20万人22.92〜5万人7.62万人未満
人口規模(2025年)自治体数需要が増える自治体の割合需要指数の中央値
20万人以上15877.2%103.6
5〜20万人49849.8%99.9
2〜5万人40122.9%94.5
2万人未満8277.6%88.8

20万人以上では8割近くで需要が増える一方、2万人未満では8%弱にとどまります。「高齢化で伸びる」は、人口規模の大きい自治体では多くで当てはまり、小規模自治体ではむしろ例外的です。

需要が増える525自治体に共通していること

増える側の525自治体を、他の条件と突き合わせると次のようになります。

条件525自治体のうち該当割合(参考)1,884自治体全体での割合
65歳以上の実数が2035年に増える50796.6%36.6%
人口5万人以上37070.5%34.8%
総人口が2035年に増える13826.3%7.3%

読み取れるのは3点です。

  1. 65歳以上の「実数」が増えていることは、ほぼ共通している(96.6%)。高齢化率ではなく実数です。高齢化率が上がっても高齢者の実数は減る自治体が多いことは高齢化率と実数の乖離の検算で扱いました。
  2. ただし実数が増えれば足りる、ということではない。65歳以上の実数が増える自治体は全国に689ありますが、そのうち 182(26.4%)では泌尿器科の需要指数は100を下回ります。高齢者の増加が、他の年齢層の減少を相殺しきれないためです。とはいえこの取りこぼしの割合は、眼科(49.5%)よりは小さく、泌尿器科は高齢者の増加が需要増につながりやすい方だといえます。
  3. 総人口が増えている必要はない。増える525自治体のうち総人口も増えるのは138(26.3%)にとどまり、残る7割超は総人口が減りながら需要指数が100以上になっています。逆に、総人口が2035年に増える自治体(全国138)は、その138すべてで泌尿器科の需要指数も100以上でした。

都道府県計で見ると、2035年の泌尿器科需要指数が100以上になるのは47都道府県のうち10都県で、最も高いのは沖縄県の109.9でした。県単位で100以上になるのは少数で、上の分布は県ではなく自治体単位で見たときの姿です。

なぜこの形になるのか(受療率の年齢プロファイル)

泌尿器科の外来受療率(人口10万対)を年齢層別に見ると、加齢とともに上がった後、80〜84歳の503でピークを打ち、85〜89歳484、90歳以上では336まで下がります。ピーク時の約67%です。内科が90歳以上でも3,358と上がり続けるのとは違い、最高齢層では受診が落ちます。

年齢層泌尿器科の受療率(10万対)内科の受療率(10万対)
65〜69歳3401,993
70〜74歳4152,452
75〜79歳4782,938
80〜84歳5033,261
85〜89歳4843,273
90歳以上3363,358

一方、2035年までの人口の動きは年齢層で分かれます。全国の65歳以上人口の指数は103.3、0〜14歳は85.8、総人口は94.6です。増えるのは高齢層で、若年層は減ります。ここで泌尿器科の特徴が効きます。泌尿器科の需要は65歳以上が67.1%を占め、15歳未満はわずか0.8%しかありません。減っていく若年層の影響をほとんど受けず、増えていく高齢層の動きにほぼ連動するため、全国計は横ばい(100.2)に踏みとどまります。眼科(15歳未満が6.8%)より若年層の比重が小さいぶん、人口減の逆風を受けにくい構図です。

ただし受療率が80〜84歳でピークを打ち90歳以上で落ちるため、これから増える中心が最高齢層に寄るほど、高齢者の実数の増加はそのままの倍率では需要に効きません。この2つが重なった結果として、泌尿器科の需要が増える自治体は「65歳以上の実数が増え、かつ人口規模がある程度大きい地域」に寄り、それが人口規模の勾配(20万人以上で77.2%、2万人未満で7.6%)として表れます。データ上は、高齢化の進行度そのものよりも、高齢者の実数が増えるかどうかと人口規模の方が、需要の向きとよく対応しています。

この記事で言えること・言えないこと

  • 指数は2025年を基準とした相対的な需要の増減であり、患者数やクリニックの売上・収益の予測ではありません。
  • 受療率は令和5年患者調査の全国値を全年齢で固定しており、将来の受療行動の変化・技術進歩・診療報酬改定は反映していません。また受療率は男女を分けていない全国値のため、男女別の需要の違いはこの計算では区別できません
  • 将来人口は社人研「令和5年推計」の中位仮定という1シナリオです。
  • 「共通点」は増える自治体に多く見られる条件であり、因果関係の証明ではありません。また、条件を満たせば需要が増えるという意味でもありません(65歳以上の実数が増える自治体の約4分の1では需要指数が100を下回ります)。
  • 自治体単位・年齢構成による相対評価であり、個別の立地の良否や競合状況は含みません。実際の判断は、需要の向きに加えて競合の届出実数や現地の条件と合わせて見る必要があります。

お探しの市区町村の人口動態・競合クリニック密度はエリア別の開業データから確認できます。

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本記事は開業検討の参考情報であり、開業の成否を保証するものではありません。出典・参照資料:社人研R5推計(中位) / 令和5年患者調査(泌尿器科・内科の外来受療率, 2023)。